日曜日, 4月 16, 2006

青山真治監督の

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

先週末久しぶりに観た映画がこれでした。

感染者の自殺を誘発する奇病「レミング病」が流行する2015年の日本が舞台。「彼らが演奏する音を聞くと自殺を防げる」との噂を聞きつけ、二人のミュージシャンの下に祖父に連れられ少女がやってくる。いろいろあった挙げ句、ミュージシャンの演奏を聴いて少女は回復する、という筋書き。
監督:青山真治  
出演:浅野忠信、宮崎あおい(かわいい)、中原昌也とか。

見に行ってよかったと思いました。
特に良かったと思うのはミュージシャンが少女に演奏を聴かせるクライマックスのシーン。真っ青な空と緑の芝生が接する地平線、その前で真っ白い服を着た男によって演奏されるというか発せられる癒しのノイズ攻撃、こんな状況、映画ん中じゃなきゃ絶対に体験できないだろうって場面が(恐らく)10分以上続きます。こういうシーンを観られたというだけで、俺は満足ですぜ。

最近になってやっとわかったのだけれど、俺が映画を観たり音楽を聴いたり本を読んだりする最大の理由は自分が変わるきっかけが得られる(かも知れない)ということ。自分の殻を破って前へ踏み出したいとかそういう言う話じゃ全然なくて、何かのきっかけで自分の視点が変わる事で、周りの景色ががらっと違って見えるようになる、これが単純に快感なのです。そんでこれまでの経験から、映画とかってのは自分が変わるきっかけになりうると俺は思っている。

こういう風に、映画を自分が変わるための「触媒」みたいに考えると、当然テーマも重要なんだけど、それ以上に色とか音のような感覚的で具体的なものがより大きな意味を帯びてくる。だって俺が今まで観た映画で、ストーリーは忘れたけど具体的なシーンは思い出せる、ってのはいくらでもある。これはきっと、俺の脳みそのアーカイブの中では断片的な映像とか音の方が大きな意味を持っているということでしょう。だから俺は印象的な映像とか音に触れられる映画を観ると、高い金払った甲斐があった、と思うのです。

青山真治監督の映画は「ユリイカ」と今作の2つしか観てないけど、印象的なシーン満載の映画を撮るという点で既に俺ランキングの上位の地位を獲得しています。お前何人映画監督知ってんだよ、って話もありますが。まあいずれにせよすごい人もいたもんだ、と思います。

最後に言っておくとこの映画のタイトル「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」これはキリストの最後の言葉のシリア語訳で、「主よ、主よ、なぜ私を見捨てたのですか?」という意味なのだそうですが、言いにくく、覚えにくい。僕は映画館のレジでこの名前が出てこなくなって、「エリ・エリ・、 、 、なんとか、一枚お願いします」と恥ずかしい思いをしました。もしこれから見に行く人がいたら「エリ・エリ・、」と10回ぐらい唱える練習してからチケット売り場に向かったほうがいいですよ。